肺高血圧症治療ガイドライン(2012年改訂版) Guidelines for Treatment of Pulmonary Hypertension(JCS2012)
抗凝固療法・利尿薬・酸素療法 膠原病の疾患活動性 NYHAⅡ ・ステロイド薬 ・免疫抑制薬・アンブリセンタンA・(ボセンタン)A・シルデナフィルA・Ca 拮抗薬B ・タダラフィルB・ベラプロスト徐放薬NYHAⅢ・アンブリセンタンA ・ボセンタンA・シルデナフィルA・エポプロステノールA・タダラフィルB ・ベラプロストCNYHAⅣ・エポプレステノールA・アンブリセンタンC ・ボセンタンC・シルデナフィルC・タダラフィルCPH 発症早期 進行性 有効(ある) 無効(ない) ・心房中隔切開術 ・肺移植 併用療法 : Prostanoid ERA PDE5-Ⅰ の間で ある ある ない ない 継続
Class Ⅰ 抗凝固療法 (Level B) 酸素吸入 (Level B) ベラプロスト (Level B) ERA (Level B) PDE5⊖Ⅰ (Level B) エポプロステノール (Level B) 一酸化窒素(NO)(*) (Level B) ジギタリス・利尿剤・強心薬 ( Level B) Class Ⅱb 免疫抑制療法 (Level B) ステロイド薬 免疫抑制薬 ERA:エンドセリン受容体拮抗薬 PDE5-I:ホスホジエステラーゼ5阻害薬
無症候でのスクリーニング1) 心臓超音波検査 推定肺動脈収縮期圧 ≧36mmHg Aの4項目以上を満たす PAH は否定的 (定期的な評価が必要)3) PAH 疑い 右心カテーテル検査を推奨4) PAH5) 2) 推定肺動脈収縮期圧 37 ~ 50mmHg 2) 推定肺動脈収縮期圧 >50mmHg 2) いいえはいAの4項目以上を満たすいいえはい 肺高血圧症を疑う臨床所見,検査所見 A 労作時の息切れ 胸骨左縁収縮期拍動 第Ⅱ肺動脈音の亢進 胸部X線像での肺動脈本幹部の拡大あるいは左Ⅱ弓の突出 心電図上の右心肥大あるいは右室負荷 B BNP またはNT-ProBNP 高値 %VC/%DLoo≧1.4 高尿酸血症
MC T D 班 内調査149) 全身性自己免疫 疾患班内調査15) 北米調査151) 北米調査151) 報告年1998 2003 2005 2005 主治医診断心エコー調査主治医診断心エコー調査 MCTD 16/230(7.0%) 8/50(16.0%) 11/100(11.0%) 18/94(19.1%) SSc 26/320(5.0%) 12/105(11.4%) 111/715(15.5%) 193/697(27.7%) SLE 14/847(1.7%) 18/194(9.3%) ─ ─ PM/DM
2 結合組織病に伴う肺動脈性肺高血圧症
要旨 結合組織病は一般人口に比し,高率に肺高血圧症が合併する.多くは他に誘因がみられないIPAH様の肺高血圧症であるが,それ以外にも間質性肺炎や肺血栓塞栓症などに続発して起こる肺高血圧症も存在する. 結合組織病に伴う肺高血圧症の病態改善のための治療は,内科的には血管拡張薬,強心薬,抗凝固薬などがある.これらの投与は,IPAHや肺血栓塞栓症の治療指針に準じて行われる.しかしながら結合組織病に伴う肺高血圧症に対して,ステロイドや免疫抑制薬の投与が有効であったとの報告もみられる.また結合組織病に伴う肺高血圧症は,結合組織病という基礎疾患に対して定期的に経過観察されていることもあり,肺高血圧症に由来する臨床症状・所見が出現する前に肺高血圧症が発見されることもある. 2011年には混合性結合組織病(MCTD)に対する肺高血圧症の診断の手引きと治療ガイドラインの改訂がなされた.今後,これらの改訂案の検証と他の結合組織病 への適用について検討が必要と思われる.①疫学,成因 1)結合組織病に伴う肺高血圧症の頻度 結合組織病の肺高血圧症合併率については,国内外に種々の報告がある.本項では,代表的なデータとして1998年度の「厚生省特定疾患皮膚・結合組織調査研究班混合性結合組織病分科会」での調査成績149) ,2003年度の「厚生労働科学研究アレルギー疾患予防・治療研究事業,全身性自己免疫疾患における難治性病態の診断と治療法に関する研究」班での調査成績15) を示す(表11 ). 前者は日常診療の中で主治医が肺高血圧症を合併していると認識している患者に関する調査であり,臨床所見がみられる患者群である.一方,後者はMCTDに伴う肺高血圧症のスクリーニングのための診断の手引き(MCTDにおける肺高血圧症の診断基準150) に基づき,心エコー検査を原則的に施行することを前提とした調査であり,無症候のものも含まれている可能性がある.前者ではMCTD 7.0%,強皮症(SSc) 5.0%,全身性エリテマトーデス(SLE) 1.7% に肺高血圧症の合併がみられ,多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)では肺高血圧症の合併例はなかった.後者ではMCTD 16.0%,SSc 11.4%,SLE 9.3%,PM/DM 1.5%に肺高血圧症がみられた.いずれもMCTDやSSc などいわゆる強皮症スペクトラムの疾患群で高率であった.後者では肺高血圧症合併40例中19例で肺高血圧症に由来する臨床症状・所見を認めず,心エコー検査をしなければ発見されなかった例と思われる.同様の所見は2005年に報告された北米50施設の研究151)でもみられている( 表11 ). すなわちMCTDでは主治医診断で11.0%,心エコー検査で19.1%,SSc では主治医診断で15.5%,心エコー検査で27.7%と高率であった.かかる高率の肺高血圧合併頻度は,心エコー検査による偽陽性例を含む可能性が指摘されてきた.しかし2010年の報告152)で,フランスとイタリアのSSc 患者1,165名において,肺高血圧症が疑われる患者に右心カテーテル検査を行い,5.5%に肺高血圧症が認められた.gold standardである右心カテーテル検査を用いて多数例のSSc 患者における肺高血圧症の合併率が高いことが確認された.2)結合組織病に伴う肺高血圧症の原因 結合組織病に伴う肺高血圧症は,その発症機序から, ① 何らかの免疫異常に起因する血管炎が誘因として推測されるが,その他に明らかな原因はなく,肺動脈末梢での内腔の狭窄・閉塞によるもので,IPAH/ HPAHと類似の病態と考えられるもの(結合組織病に伴う肺高血圧症の主要病態), ② 抗リン脂質抗体症候群や高安動脈炎などによって肺動脈に慢性血栓塞栓症が生じ,その結果肺高血圧症が続発してくるもの(慢性マクロ肺血栓塞栓症およ びIPAH/HPAHと鑑別不可能な慢性ミクロ肺血栓塞栓症がある), ③ SSc などにしばしば伴う間質性肺炎(肺線維症)が肺血管床を減少させるような重度な場合,それに続発してくるもの(実際には間質性肺炎が強くてもあまり肺動 脈圧は上がらない), ④ 高安動脈炎やSLEで報告のある肺動脈末梢の血管炎によるもの, に大別される.②予後・重症度評価 1)結合組織病に伴う肺高血圧症の予後に関する疫学 一般に肺高血圧症の予後は著しく不良であるが,結合組織病に伴うものはIPAHに比してさらに予後不良である.しかしながら,実臨床では必ずしも全例がすべて予 後不良の患者ばかりではないことが知られている.このため1997年度の「厚生省特定疾患皮膚・結合組織調査研究班混合性結合組織病分科会」で予後調査153) が行われ,予後が比較的良好な群と,通常の肺高血圧症と同様に予後不良な群に分けられることが判明した.予後悪化因子として,分割表法では肺線維症,肺拡散能障害,労作時胸骨後痛,胸骨左縁収縮期雑音,疲れやすさ,筋逸脱酵素上昇があった.また多変量解析では多発関節炎,肺高血圧症の確診例,筋逸脱酵素上昇,SSc 関連の皮膚病変が抽出された.さらにPM/DMの診断基準を満たす例の生命予後は不良であった.2)重症度評価 結合組織病に伴う肺高血圧症に特有な重症度評価は作成されていない.IPAHにおける重症度評価を通常用いている.③特異的な診断手順 1)結合組織病の診断 各結合組織病には,それぞれ分類基準(診断基準)が作成されているので,それを参考にして診断を進める.2)肺高血圧症の診断 まず労作時の息切れ,顔面や下肢の浮腫,Ⅱ音肺動脈成分の亢進など自他覚症状の有無が重要である.ただ,特に初期ではこれらの所見のないことも少なくないため,必要に応じて胸部X線写真,心電図検査,心エコー検査などの肺高血圧症のスクリーニング検査を施行することが望まれる.1998年のRichによる原発性肺高血圧症ワールドシンポジウム報告書でも,強皮症スペクトラムの疾患(SSc とMCTD)では無症状でも年1回の心エコー検査によるスクリーニングを勧めている.肺高血圧 症が疑われる場合には,右心カテーテル検査による肺動脈圧,肺血管抵抗などの測定が有用である. 安静時の平均肺動脈圧が25mmHg以上をもって肺高血圧症と診断する.右心カテーテル検査の施行が事情によってできない場合も含めて, 結合組織病( 特に MCTD)に伴う肺高血圧症のスクリーニングのための診断の手引き(MCTDにおける肺高血圧症の診断基準)が厚生労働省混合性結合組織病に関する調査研究班により1991年に策定150) され,2011年に改訂154) された(図7 ). この診断の手引きの最も大きな改訂点は,右心カテーテル検査での平均肺動脈圧25mmHgが,心エコー検査の推定肺動脈圧のいくつに相当するのかを記載した点である.右心カテーテル検査を必須とはしていないが,治療を行う際には右心カテーテル検査で肺動脈圧の上昇を確認することが望ましい.この基準はMCTDのために作成されたものであり検証が必要である.他の結合組織病への準用が可能かどうかの検証も必要であるが,その有用性は強く期待される.3)肺高血圧症発症機序の鑑別 肺高血圧症の発症機序がIPAH/HPAH様のものと,慢性肺血栓塞栓症や間質性肺炎(肺線維症)などに続発したものとを鑑別しておくことが治療上必要である.そのためには,肺換気─血流シンチグラムでの多発性の血流欠損により慢性肺血栓塞栓症の合併を,胸部X線写真や胸部CT所見などにより間質性肺炎(肺線維症)の合併の有無をみておくことが重要である.④治療アルゴリズム 1) 治療の総論 結合組織病に伴う肺高血圧症の治療は,その発症機序に基づき,IPAH/HPAH様の肺高血圧症,慢性肺血栓塞栓症に伴う肺高血圧症,間質性肺炎(肺線維症)に伴う肺高血圧症,心筋の線維化による左心由来の肺高血圧症などで異なる.それら肺高血圧症の病態改善の治療はそれぞれ由来する肺高血圧症に記述されている治療指針に準じて行われる.詳細はそれらの項目を参照されたい. 結合組織病では肺高血圧症以外の臓器病変に対して副腎皮質ステロイド(以下,ステロイド)が投与され,活動性が強く難治性の場合にはステロイドパルス療法や免疫抑制薬の併用などが行われる.また結合組織病に伴う肺高血圧症の発症機序には免疫学的異常が関与している可能性もある.したがってこれらの免疫療法が結合組織病に伴う肺高血圧症によい影響を与える可能性があり,有効であったとの報告もみられる.そこで,結合組織病に伴う肺高血圧症に対してステロイドや免疫抑制薬の使用も勘案した治療指針が,厚生労働省のMCTD班のほか「全身性自己免疫疾患における難治性病態の診断と治療法に関する研究」班,「免疫疾患の合併症とその治療法に関する研究」班との協議のもと合同で2005年に作成された155) . その後,いくつかの重要な進歩がみられた.我が国における薬剤について,ベラプロスト徐放錠,ボセンタン,シルデナフィル,アンブリセンタン,タダラフィルが認 可され,さらに複数の薬剤の治験が進行している(2012年1月現在).またIPAHの治療ガイドラインが,米国1) やヨーロッパ3) ,我が国(06版日循)で改訂された.結 合組織病に伴う肺高血圧症の治療において,本ガイドラインが欧米の治療ガイドラインと最も異なる点は,ステロイドなど免疫抑制療法の扱いである.従来,まとまっ た報告はみられなかったが,2006年にretrospectiveではあるが,多数例の免疫抑制療法に関する報告156) がなされ, その有用性が再認識された. これらを踏まえ,MCTD班において修正したガイドラインを作成した(図8 )157) .これはMCTD以外の結合組織病に伴う肺高血圧症にも準用できるものと思われる. IPAH類似の結合組織病に伴う肺高血圧症の治療を簡単にまとめると(表12 ), ・速やかに抗凝固薬を使用する ・右心負荷の軽減のため,有効な肺血管拡張薬を用いる ・生活指導も重要で,安静に努め,肺高血圧症の増悪因子である喫煙,感染症,発熱,貧血,塩分・水分の過剰摂取,寒冷曝露,疲労の除去に努める.2)主な治療薬 ①酸素,抗凝固薬など ・酸素吸入はSaO2 が90%以上を保つように使用する. ・抗凝固薬の適応は,①消化管に潰瘍のない例,②抗リン脂質抗体症候群併存例ではアスピリン服用にもかかわらず肺高血圧症を認める例とする. ・ジギタリス,利尿薬,カテコールアミンの使用はIPAHに準ずる.②副腎皮質ステロイド・免疫抑制薬 以前からステロイドや,免疫抑制薬が結合組織病に伴う肺高血圧症に有効と思われる症例のあることが報告されている.また,厚生労働省MCTD研究班内の約40例の結合組織病に伴う肺高血圧症の治療状況をみると,ステロイドが64%に使用されており,ステロイド投与群は非投与群に比し肺動脈圧の改善度が有意に優れていた.多数例のretrospectiveな研究156) では,シクロホスファミド間欠静注療法とステロイド大量療法を行うと,肺高血圧症の改善する例がみられ,NYHA/WHO機能分類のⅠ,Ⅱ度の症例や心拍出量,総肺血管抵抗など肺血行動態のよい症例で有効例は多かった.このようにステロイド・免疫抑制薬の有効な症例は存在し,特に発症早期・軽症の肺高血圧症に有効な可能性が考えられる.発症早期の定義や投与量については今後の検討が必要であるが,NYHAⅠ度(あるいはⅡ度まで)で肺高血圧症の症状が出る前が望ましい. プレドニゾロン:45mg/日,分3 アザチオプリン:100~ 150mg/日,分2~ 3 シクロホスファミド:500~ 1,000mgを500mLのブドウ糖液に混注し,ゆっくり点滴静注/4週毎③プロスタサイクリン(プロスタグランジンI2 :PGI2 ) プロスタサイクリンは血管内皮で合成されるプロスタグランジンで,強力な血小板凝集抑制作用と血管平滑筋弛緩による血管拡張作用を主たる作用とし,抗炎症作用や好中球遊走抑制作用,線溶系賦活作用も有する.肺では強力な肺血管拡張作用と強力な血小板凝集抑制作用および肺の血管透過性抑制作用がみられる. 我が国でも本薬剤の経口薬(ベラプロスト)と静注薬(エポプロステノール)が使用されており,最近,ベラプロストの徐放薬錠も認可された.特に静注薬のエポプロステノールは有効性が高く127),重度の肺高血圧症患者の福音となり得る.ただし24時間持続投与が必要であり,有効治療域に達するまで薬剤量を漸増する必要の あることや,わずかな投与量の変動で作用・副作用が変動しやすいこと,ほぼ毎日新たに薬液を調製する必要があることなど煩雑な面もある.本薬剤の副作用・問題点としては,血小板減少,神経障害性下肢痛,腹水,耐性による効果減弱がある. 在宅持続静注療法もPAHに対して保険適応がある.ベラプロストは軽症例には使用しやすい薬物であるが,血中濃度の急激な増加による顔面紅潮などの副作用で十分量投薬できない症例もみられる.徐放錠158)ではこの副作用が軽減されるため,有効性の高まることが期待される. ベラプロストナトリウム徐放錠:120~ 360μg/日,分2 ベラプロストナトリウム:60~ 180μg/日,分3 エポプロステノール:点滴静注 ④ エンドセリン受容体拮抗薬(ERA: ボセンタン ,アンブリセンタン) エンドセリンは,血管内皮細胞から産生される生体内で最も強力な血管収縮物質であり,また血管平滑筋細胞の増殖因子でもある.その受容体には,血管平滑筋細胞表面にあり血管収縮や平滑筋増殖に作用するA型受容体と,血管内皮細胞にありむしろ血管拡張に作用するB型受容体がある.ボセンタンは,A,B型両方の受容体に結合する物質,アンブリセンタンはA型受容体にのみ結合する物質で,いずれも強力な血管収縮抑制作用がある.IPAHにも結合組織病に伴う肺高血圧症にも有効性が確認されている103) .我が国でもPAH全般に対して適応がある経口薬であり,その効果は,ベラプロストより強くエポプロステノールより弱い程度と思われる. ボセンタン:62.5~ 125(~ 250)mg/日,分2 アンブリセンタン:5(~ 10)mg/日,分1 ⑤ ホスホジエステラーゼ5 阻害薬(PDE5-I:シルデナフィル,タダラフィル) サイクリックGMP特異的ホスホジエステラーゼ5型に対する選択的阻害薬である.この酵素は肺と陰茎に多量に存在し,陰茎動脈を拡張することから肺の血管拡張 の可能性が考えられ,実際,IPAHにも結合組織病合併肺高血圧症にも有効性が確認されている113) .体血圧は低下させないが,肺動脈圧を有意に低下させ,心拍出量を増加させる. シルデナフィル:60mg/日,分3 タダラフィル:40mg/日,分1おわりに 結合組織病に伴う肺高血圧症はその頻度が高く,しかも予後を規制する因子が見出されている.さらに発症初期から観察できる可能性があり,早期診断早期治療が望める状況である.また副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬などが治療に参画できる可能性も指摘されている.その存在に常に留意し,早期診断に努めるとともに,近年優れた薬物が使用可能となっていることを十分認識し,適切な治療が望まれる.
表11 膠原病における肺高血圧症の出現率
図7 結合組織病に併発する肺高血圧症の診断手順
図7 の注 1) 混合性結合組織病(MCTD)患者では肺高血圧症を示唆する臨床所見,検査所見がなくても,心臓超音波検査を行うことが望ましい。 2)右房圧は5mmHg と仮定. 3) 推定肺動脈収縮期圧以外の肺高血圧症を示唆するパラメータである肺動脈弁逆流速度の上昇,肺動脈への右室駆出時間の短縮,右心系の径の増大,心室中隔の形状および機能の異常,右室肥厚の増加,主肺動脈の拡張を認める場合には,推定肺動脈収縮期圧が36mmHg以下であっても少なくとも1年以内に再評価することが望ましい. 4) 右心カーテル検査が施行できない場合には慎重に経過観察し,治療を行わない場合でも3か月後に心臓超音波検査を行い再評価する. 5)肺高血圧症の臨床分類,重症度評価のため,治療開始前に右心カテーテル検査を施行することが望ましい.
表12 結合組織病に伴うPAHに対する治療
図8 結合性組織病に伴う肺高血圧症の治療手順
図8の説明 結合組織病合併肺高血圧症の治療ガイドライン157) ・薬剤名の後のアルファベットは,Barst RJ, et al. Updated evidence-based treatment algorithm in pulmonary arterial hypertension1) による推奨度である。 同じ推奨度の中ではABC順に薬剤名を記した。 ・ボセンタンはNYHA Ⅲ度以上に保険適応が限定されているため,NYHA Ⅱ度の欄ではカッコを付けた。 ・ETR:エンドセリン受容体拮抗薬(アンブリセンタン,ボセンタン) PDE5-I:ホスホジエステラーゼ5阻害薬(シルデナフィル,タダラフィル) ( 本治療手順は2011年作成の為,若干今回2012年改訂版のIPAH/HPAHに対する治療手順とは異なる)
文献 ・ 吉田俊治,深谷修作,京谷晋吾,ほか:混合性結合組織病 ( MCTD)の肺動脈性肺高血圧症(PAH)診断の手引き改訂について. 厚生労働省難治性疾患克服研究事業 混合性結合組織病調査研究班平成22年度報告書154)