肺高血圧症治療ガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Treatment of Pulmonary Hypertension(JCS2012)
 
古いパラダイム
・肺血管の収縮/ 拡張
のアンバランス
・血管Shear stress の増加
・凝固/ 線溶異常
・遺伝的羅患感受性,腫瘍抑制遺伝子
体細胞変異
・遺伝子発現調節エピジェティクス異常
・感染・炎症仮説・自己免疫仮説
血管再生仮説・骨髄幹細胞仮説など
アポトーシス抵抗性仮説
新しいパラダイム
 肺高血圧症の成因は,1970年代からの肺血管における“収縮/拡張の不均衡”説から,現在では“血管壁の異常な細胞増殖による血管腔の狭窄・閉塞”説へと変遷してきた(図356)-58).この異常な細胞増殖の誘因には,血管壁の炎症-変性-腫瘍性増殖の組み合わさった概念も背景因子として加わっている.本症は,臨床的にも家族性・遺伝性に加え,結合組織病,HIV感染,先天性心疾患によるshear stress 増加,門脈疾患,新生児遷延性肺循環,血液疾患,サルコイドーシスなどの全身性疾患に伴って発症することから,その発症原因は遺伝子と環境因子とのtwo-hit theoryもしくは multiple- な trigger を推測せざるを得ない.
1 原因論のパラダイムシフト
図3 肺動脈性高血圧の病因における概念の変移
( 文献55を引用,改変)
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