肺高血圧症治療ガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Treatment of Pulmonary Hypertension(JCS2012)
 
 CTEPHでは基礎疾患として①深部静脈血栓症②凝固能異常(抗リン脂質抗体陽性,Protein C や Protein Sなどの欠損など)が存在し,肺に血栓塞栓症を反復することで肺動脈が慢性閉塞し,閉塞した血管数が多くなるにつれ肺高血圧を呈するようになる.

 CTEPHの肺動脈病変は主肺動脈から連続して内膜肥厚が起こっている場合と,主に区域枝から内膜肥厚が始まっている症例がある.また,さらに末梢の肺動脈にのみ血栓形成が認められ,臨床的にIPAHとの鑑別が困難となる症例もある.末梢枝のみの閉塞の場合は手術による内膜剥離が困難となる.近年,我が国ではカテーテルを用いた肺動脈拡張術が行われるようになり,比較的末梢の血栓性閉塞も開大できるようになった.閉塞した部位の肺動脈には器質化した血栓塞栓や血栓内の再疎通血管像が存在する場合がある.非閉塞部での肺動脈でも肺高血圧の二次的変化としてびまん性内膜肥厚がみられる.拡張した肺動脈主幹部は瘤状となり,しばしば壁在血栓形成を来たす.閉塞部領域の陳旧性肺梗塞を認める.これはIPAHにはあまりみられない所見である53),54)
5 第4 群:CTEPH
Ⅰ 総論 > 5 肺高血圧症の病理45),46) > 5 第4 群:CTEPH
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