肺高血圧症治療ガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Treatment of Pulmonary Hypertension(JCS2012)
1.肺動脈性肺高血圧(前細葉動脈/細葉動脈)
1)肺動脈病変:孤立性中膜肥厚のみ
(Heath-Edwards GradeⅠ)
2)肺動脈病変:中膜肥厚+内膜肥厚(細胞性・線維性)
(Heath-Edwards GradeⅡ,Ⅲ)
①求心性層状病変
②偏心性非層状病変
3)肺動脈病変・叢状病変(plexiform lesion),拡張病変,
血管炎の単独,あるいは組み合わせ(Heath-Edwards
Grade Ⅳ-Ⅵ)
4)孤立性血管炎
1a. 1の病変に小静脈性病変(細胞性/線維性 内膜肥厚,
静脈の動脈化)の合併
特記すべき所見の存在
外膜肥厚,血栓性病変(新鮮,器質化,篩状),壊死性
血管炎,単球性血管炎
弾性動脈変化(線維化,動脈硬化,弾性線維変性),気
管支動脈変化,鉄沈着,石灰化,異物塞栓,リンパ球
浸潤を伴う陳旧性梗塞
2. 肺静脈閉塞症(あらゆる大きさの静脈および小静脈の病
変に動脈病変を合併することもある)
1)静脈性変化:内膜肥厚・閉塞(細胞性,線維性),再
疎通
2) 外膜肥厚:静脈の動脈化,異物反応を伴う鉄・カルシ
ウム沈着
3)毛細血管変化:拡張,うっ血,血管腫様
4) 間質性変化:浮腫,線維化,ヘモジデローシス,リン
パ球浸潤
5) その他;リンパ管拡張,ヘモジデリン貧食マクロファ
ージ細胞内浸潤,Ⅱ型肺胞上皮増殖
3. 肺微小血管症(動脈症,静脈症の合併があってもなくて
もよい)
1) 微小血管病変:限局性毛細血管増殖,静脈内閉塞性毛
細血管増殖
2)静脈内膜線維化
3)間質性変化:浮腫,線維化,ヘモジデローシス
4) その他:リンパ管拡張,ヘモジデリン貧食マクロファ
ージ,Ⅱ型肺胞上皮増殖
4.分類不能
6 第5群: 原因不明あるいは複合的な要因による肺高血圧症
肺結核,サルコイドーシスなどにより二次的に肺高血圧を来たすことがあり,肺血管病変が発生することがある.原疾患により異なる所見である.以上,再改訂版肺高血圧症臨床分類に則り,肺高血圧症の病理を提示した(表6).
付)悪性腫瘍による肺高血圧症
1) 肺動脈内膜肉腫(intimal sarcoma of pulmonary artery)
肺動脈内膜が腫瘍性に増殖し,CTEPH様の病態を呈する.早期は肺動脈内増殖のみで血管外へ腫瘍細胞が浸潤しにくいので,CTEPHと鑑別が難しい.CTEPHの手術により初めて発見されることがある.
2) 肺動脈微小腫瘍塞栓(pulmonary tumor thrombotic microangiopathy: PTTM)
原因不明の急速に進行する肺高血圧と呼吸不全を呈する症例の中にはPTTMによるものがある.腫瘍のリンパ管が静脈浸潤により肺小動脈レベルでの腫瘍塞栓が起こり,また内皮細胞傷害などから血栓も形成されることで,末梢肺動脈の腫瘍と血栓による閉塞を来たし,肺高血圧を示す病態である.基礎疾患は胃がんが多いが,他は大腸がん,乳がんなど腺がんがほとんどである.
表6 肺高血圧症の血管病理分類
(文献45を改変)