肺高血圧症治療ガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Treatment of Pulmonary Hypertension(JCS2012)
 
 CTEPH,大動脈炎症候群に由来する肺血管病変,肺動静脈奇形,末梢性肺動脈狭窄症などでは診断および治療法の決定に有用である.しかしPAHに対しては,特別な場合を除きPAGの適応はない.

 CTEPHや大動脈炎症候群に由来する肺血管病変では右肺動脈と左肺動脈を別々に造影する(ピッグテイルカテーテルを用いると安定した撮像が可能となる場合が多い).基本的には右肺動脈は正面,側面,右前斜位45度,左前斜位45度で撮影,左肺動脈では肺動脈の枝を分離して観察できるように正面の代わりに左前斜位10~ 15度(さらに頭側に10~ 15度傾けることもある)で撮影する.一方,肺動静脈奇形,末梢性肺動脈狭窄症で病変部位が限局性で事前に病変部位が判明しているのであれば,ピッグテイルカテーテルを病変近くまで進め選択的造影を行う.びまん性の末梢肺血管病変の診断にはwedge-balloon カテーテルを区域肺動脈まで進め,バルーンを膨らませ血管を閉塞後,ゆっくり手押しで造影剤を注入するwedged PAGが有用である場合が多い(急速な注入は肺出血を引き起こす可能性がある.本法の主な有害事象は造影剤注入時の一過性咳嗽である).

 造影剤の改良により,肺高血圧症患者への肺動脈造影の安全性は増大したが,NYHA/WHO機能分類Ⅳ度の症例に対しての造影は避けるべきである.Hofmanらは,重篤な合併症が慢性肺高血圧症で0.7%( 1/151;非致死性),急性肺高血圧症で5.9%(3/51;全例致死性)に発生したと報告している38)
10 肺動脈造影(PAG)
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