肺高血圧症治療ガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Treatment of Pulmonary Hypertension(JCS2012)
下大静脈径呼吸性変動推定右房圧
小(<15mm)
正常(15~25mm)正常(15~25mm)拡大(>25mm)
拡大+肝静脈拡大虚脱>50%
<50%<50%不変
4 心エコー
肺高血圧症が疑われる症例には必須の検査であり,非観血的に肺動脈圧を推定するのに有用である.肺動脈圧の推定にはいくつかの方法があるが,連続ドプラ法を用いた三尖弁逆流速度から簡易ベルヌーイ式を用いて推定する方法が最も一般的である.
(推定肺動脈収縮期圧=4 ×(三尖弁逆流速度)2 +推定右房圧))
推定右房圧はしばしば5mmHgもしくは10mmHgの固定値が用いられるが,より詳細な右房圧を下大静脈径と呼吸性変動の程度から推定する方法も提唱されている(表4).ただし,過小評価や過大評価も少なくなく29),肺高血圧症の確定診断には右心カテーテル検査が必要である.その他,右室流出路血流波形での駆出加速時間の短縮,Bモード断層法では心臓の形態の変化を観察し,右心室・右心房の拡張と,高度肺高血圧の場合には心室中隔の左室側への偏位や右室壁肥厚が認められる.
心エコーは肺高血圧症の原因の検索にも重要であり,先天性心疾患に伴う肺高血圧症や第2 群の左心疾患による肺高血圧症の有無の評価にも有用である.心エコーによる予後規定因子として,心嚢液貯留30),右房面積係数30),拡張末期eccentricity index 30),右室機能の指標としてのtricuspid annular plane systolic excursion( TAPSE)31)やright ventricular myocardial performance index(Tei index) 32)が報告されている.
表4 下大静脈径と呼吸性変動からの右房圧推定