肺高血圧症治療ガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Treatment of Pulmonary Hypertension(JCS2012)
 
 
1 血液検査
 肺高血圧症を血液検査で診断することは困難であるが,本症の重症度評価や,肺高血圧症の基礎疾患を診断するためには不可欠の検査法である.肺高血圧が軽度の場合には血液検査所見は正常な場合もあるが,肺高血圧の結果として右心負荷/右心不全が生じれば,その重症度に応じてBNP 23),NT-proBNP 24)-26)尿酸27),28)が上昇することが報告されている.また右心不全が高度となれば肝機能異常が生じる可能性がある.肺高血圧症は種々の疾患に伴って発症し,PAHの中では,CTD-PAHの場合には各種自己抗体や炎症マーカーが,POPH では肝機能,HIVに伴うPAHを疑えばHIV抗体の測定が必要である.またPAHでは経過中に甲状腺疾患を合併してくる場合が知られ,甲状腺機能検査も必要である.貧血や逆シャントを伴うCHD-PAHでは多血症が顕著となる場合もあり,血小板数はすべての肺高血圧症で,臨床経過や治療薬の影響を受け増減する.CTEPHの場合には凝固線溶系分子マーカーや先天性・後天性の血栓性素因の検索も必要となる.
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