肺高血圧症治療ガイドライン(2012年改訂版)
Guidelines for Treatment of Pulmonary Hypertension(JCS2012)
 
3 肺高血圧症の症状,身体所見
 肺高血圧症の自覚症状としては,労作時呼吸困難,息切れ,易疲労感,動悸,胸痛,失神,咳嗽,腹部膨満感などがみられる.いずれも軽度の肺高血圧では出現しにくく,症状が出現したときには,すでに高度の肺高血圧が認められることが多い.また,高度肺高血圧症には労作時の突然死の危険性がある.

 身体所見としては,右室肥大に伴う傍胸骨拍動,Ⅱ音肺動脈成分の亢進,三尖弁閉鎖不全症に伴う胸骨左縁下部での汎収縮期雑音(吸気時に増強しRivero-Carvallo徴候と呼ばれる),肺動脈弁閉鎖不全症に伴う第Ⅱ肋間胸骨左縁での拡張早期雑音(Graham Steel雑音),収縮期早期のclick音,右室由来のⅢ音,Ⅳ音を聴取することがある.さらに進行例では,頸静脈怒張,肝腫大,下腿浮腫,腹水などがみられる.その他,肺高血圧症の原因となる基礎疾患に伴う様々な身体所見がみられる.
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